没後10年、追悼演奏会 記念写真
 
会場 :  東京オペラシティー近江楽堂
 

案内掲示

 
2006年4月1日 リハーサル風景
 

プログラム

 
2006年5月6日(土)14:00開演前
 
2006年5月6日(土)16:00終演後
   
 
プロターズ(by中村公樹 樹神功)♪BGMはOFFにしてください。
   
 

皆様、本日はお忙しいなかこのようにたくさんの方々にお集りいただきまして本当にありがとうございます。
私は今回のプロジェクトに参加して企画を担当させていただきました片山ともうします。
プロジェクトを代表してひとことごあいさつさせていただきます。

月日のたつのは本当にはやいもので、芳志戸先生が亡くなられてからはや10年の年月がすぎてしまいました。ただただ驚くばかりです。この10年の節目にあたって芳志戸先生の音楽についてすこし考えてみたいと思います。
先生の音楽の特色といいますか核になる要素としましては2つあると思います。
そのひとつ目はなんと言っても研ぎすまされた大変美しい音色です。
2つ目は独自の解釈による音楽造りです。
独自の解釈と申しましてもあくまでも音楽の原理、音楽の力学のうえにのった独自の解釈による演奏であったと思われます。

その2つの要素から生み出された音楽は大変緊張感の高いスタイルをもっておりました。芳志戸先生が若い頃つぎのようなことをよくおっしゃておりました。
「ころんだ子供が、泣き声を上げる前に一瞬息をつめる事があります。いわばそのような瞬間を音楽のなかで表現していきたい」
まさにその言葉通りの緊張感の高い音楽をもって盛んな演奏活動を行いました。

国内はもとより、海外での重要なコンサート、そのなかには内外の著明な演奏家との共演もたくさんありました。またギターの新しいレパートリーを広げる分野にも多大な足跡をのこされました。
世界的な作曲家の先生にお願いしてギター曲を書いていただきそれを初演すること、また御自身でヨーロッパの図書館をまわって古い音楽を発掘してギター曲へ編曲し発表する事。
この場合編曲といいましても限り無く作曲に近い作業になるわけです。

そしてその中でも特筆すべきはスペイン13世紀アルフォンソ10世が編纂した「聖母マリア頌歌集」という曲集の中から数曲選びだしてギターへ編曲し、また演奏会でとりあげた事です。
これはその年の芸術祭優秀賞という大変輝かしい賞を受賞いたしました。
その上、この曲につきましては後にあのイエペスが同じ曲を用いてイエペス編として演奏するきっかけになったといわれております。

その他後進の指導にも大変熱心でした。
大学の講師、NHKの「ギターを弾こう」の講師を2期連続で担当されそのユニークな指導法で大変注目をあびました。
それらの活躍でまさに日本のギター界のリーダーとして活躍されたわけでありますが、それだけに芳志戸先生を失ったことは日本のギター界としてもまことに大いなる損失であったわけであります。大変残念なことでした。

しかしながら、本日お集まりいただいた皆様の御記憶のなかには芳志戸先生の音色と演奏が鮮やかに生き続けていることと思います。
それこそが芳志戸先生が最後にのこされた、また最も重要な仕事ではなかったかと思われます。
そしてまた、直接先生から指導をうけた本日演奏する我々弟子たちにとっても師匠の音と演奏、そしてまた更に直接教えをうけたことから受けた強烈な感動、それらが鮮やかに生き続けております。
我々はそれを大変貴重な宝として、また人生の指針とさせていただいております。
そのような感動の体験を師匠への感謝と追悼の気持ちにかえて本日演奏したいと考えております。

きっと師匠も近くで聴いてくださることと思います。
どうぞ皆様も御一緒に、芳志戸先生を忍びながら最後までお聴きいただけますようお願いもうしあげます。

 最後に本日皆様に贈呈いたしましたCDについて一言補足させていただきます。
CDの音源の演奏会についてはプログラムにも紹介してありますが、その演奏会がおこなわれた1979年頃、私が東伏見の御自宅でレッスンを受けていた時のことです。
師匠がこういう意味の事をおっしゃいました。「先日、九州であったコンサートは自分としても大変満足できる演奏であったと思う。したがって自分にもしもの事があったら、あれをレコードにしてほしい。」

こまかいニュアンスは忘れましたが、当時そのような意味のことをおっしゃられました。
勿論御本人も私も「もしも」の事があるとは考えていなかった訳ですが、私の記憶の中に残っていたこの言葉が今回の企画のなかで突然よみがえってまいりました。
そのような訳でこのCDを皆様にお聴きいただこうと計画いたしました。
私といたしましても約27年ぶりに師匠とのお約束を実行させていただくこととなりました。

今迄世の中に発表されていない音源ですので後ほどゆっくりお楽しみ下さい。では演奏を始めさせていただきます。ありがとうございました。

 

 

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